[最優秀賞]
建築廃材からなる木質チップのエネルギー利用システム
新田ゆい
山形県出身
三浦秀一 ゼミ
建物は建てる時だけでなく壊す時にも環境への配慮が必要になってくる。建物を壊した時(図1)に排出される廃棄物の中でも廃材からバイオマス燃料になる木質チップを製造することができる。現在、山形県では建築を解体した木(図2)からつくった木質チップを再利用できるシステムが整っている施設が普及していない。従って県内で解体された廃材から製造された木質チップは県外まで運ばれ、再利用されているという実態がある。
本研究では建物を解体し、建築廃材のリサイクルについて知ると共に、県内の温泉や温水プールなど一定の電力や熱を必要とする施設にバイオマス発電機を導入し建築廃材のチップを燃料として再利用した場合を想定して様々な視点から調査?分析を行う。そしてそこから、建物解体?分別→チップ化→運搬→エネルギー利用の一連の流れをシステム化することを目的とする。
建物は解体され壊された後、産業廃棄物の項目ごとに分別される。その中でも木材に注目すると、リサイクルできるものと防腐剤などが塗られていてリサイクルできないものに分けられる。建築廃材のリサイクル方法として、古材として利用するマテリアルリサイクルもあるが、作業効率やコスト面から燃料としてリサイクルするのが現実的であると分析した。リサイクル可能な廃材は手作業で大きな釘やボルトを取り除き、専用の機械で破砕され木質チップとなる。木質チップというと間伐材が使われることがよくあるが、バイオマス発電をした場合、建築廃材は間伐材に比べ買取価格が低い。そこで売電ではなく自家消費を行うこととした。木質チップを燃料とした小型バイオマス発電機を県内のどのような施設に導入し、自家発電するとどのようなメリットがあるのか、年間を通して電気だけでなく熱も利用する施設を候補として調査を行った。そしてそれらの施設でエネルギーの需給バランスなどを分析した。すると、温泉、温水プール、老人介護施設が導入に適しているという結果が出た(図3)。また、導入することで施設側にも木質チップを作る企業側にもコストメリットがあることがわかった。山形県に温泉などの施設が多々ある。そのような県内施設に小型バイオマス発電機の導入が普及すれば建物を解体しそこから作られる木質チップをエネルギー利用するまでの一連の流れを県内でシステム化することができる。
三浦 秀一 教授 評
私たちの大学では「つくる」ことを中心に学んできた。しかし、大事なのはつくられた後のことであり、さらにそれを使い終えた後のことも考えていかなければならない時代になってきたと言える。木は建築をつくるのに大量に使われているが、建築解体後の木を再利用するのは簡単ではない。かつて多くの解体木材は、銭湯のお湯を沸かすのによく使われていたが、彼女の周りをよく見直してみると、近くの日帰り温泉、昔通った温水プールでは、大量の石油が使われていた。そして、授業の見学会で木をエネルギー源にして発電をし、お湯を作る技術が彼女の目に留まった。石油の代わりに、建築の解体木材を使えばいいのではないか。次々と調査をこなし、経済的にも石油より安く、環境的にもCO2は減らせるという明快な結果を導き出した。