[優秀賞]
高田秋奈|巡り、燃ゆる
静岡県出身
金子朋樹ゼミ
1800×2300×40mm 和紙、水干、岩絵の具
「生命の連なり」や「見えないものへの意識」をテーマに、死と生が繰り返される一情景を描きました。その存在を理解しているつもりでも、隔たりのある場所から見つめる自分自身には、もどかしさを感じます。
私たちは、自然の残酷さや死から無意識に目を背けてしまい、それらに遭遇する機会の少ない中で生きています。自然生物の死は不規則に発生し、純粋な肉体や時の流れがあるからこそ、私は美しさを感じ、表現したいと思いました。
金子 朋樹 准教授 評
髙田さんは自らの死生観を見つめ、生と死の相関を根底に絵画表現を行なってきました。「巡り、燃ゆる」と付けられた本作品は、一見すると動物の死を描いた一情景のようにも見えます。しかし作品の真意は冒頭の死生観の延長上にあり、野生動物のフィールドで繰り返される生命の循環、あるいは終焉を、遠く離れた人間社会から見つめようとする髙田さんの視線がここにはあります。動物の過酷な世界をあえて直視し、可視化することで、自身の生への想いを象った逆説的な表現とも言えるでしょう。しかし、絵画空間は決して生臭いものではなく、美しさを感じさせるほどに配置、色彩、露出への配慮が行き届いています。その手法が、表層が示すもの以上の意味を想起させる効果となり、アレゴリー性を増幅させています。
ラテン語で「メメント?モリ」という言葉がありますが、これは「死を憶え」「死を忘るなかれ」という意味を持ちます。「巡り、燃ゆる」は、まさしくメメント?モリのメッセージであり、そこには生の在りようを静かに、そして気高く魅せる髙田さんの強い眼差しが感じられるのです。