大学院Graduate School

[優秀賞]
中あやの(芸術文化専攻 洋画)|目をつむり、光を見る
千葉県出身
青山ひろゆきゼミ
H7440mm×W2715mm 油彩、キャンバス

私は画面の上部から絵の具を垂れ流し、その積層によって絵画を制作している。重力という制御の効かない技法を扱い絵の具を重ね続ける行為は、自身の身体的な無意識をあらわにし、行為と現象とが馴染み連続していく。これを続けていくことは、人の根源的な、自然のままの感覚を知ることに繋がるのではないか。日々の生活の中から似た感覚を見つけ出し、現代の視点から人の内にある自然と外界における自然との連続性を追求している。


深井 聡一郎 芸術文化専攻長 評
 中あやのは学部時代から油絵具を大量の油で溶き、垂れ流す手法を取ってきた。修了制作では今まで敢えて消す作業をしていた「筆跡」を残す試みが見受けられる。これは、これまで現象として表出させていた抽象画に、明らかに意思を込めようという表れであると考える。
 鑑賞者が展示空間に余計な意識を奪われぬよう、白く覆い隠された磨りガラスの空間は、自然光の元時間ごとに移り変わる絵画そのものへ無意識に集中させる力があり、インスタレーションとして秀逸だった。これは中がコロナ禍に於ける自宅学習期間に、生活と絵画制作を自宅で共存させた事からの気付きであろう。
 絵画は巨大である方が素晴らしいなどと決して思わないが、この巨大な抽象絵画に込められた描くという意思、また作られた空間からこの作品を観せるという意識が強く感じられ、2年間彼女が自身の研究と真摯に向かい合ってきた成果として、本学優秀賞に相応しいと判断した。