[最優秀賞]
小林賢治|saveur
山形県出身
安達大悟ゼミ
銅、真鍮、鉄、漆
佇まいをラグジュアリーに。道具としての「機能」が存在価値であるケトルから、そこに存在する「物」としての存在価値へ誘う。このケトルは、五徳に本体を置くことで流線型の洗練されたひとつの造形物となる。固形燃料を燃焼させることで湯を沸かすため、湯が沸くのも決して早くは無い。しかし、合理的に時が流れる現代だからこそ、手をかけ、時間をかけている。多少の不便が一つの物で価値へと変貌することを目指して制作した。
坂井直樹 准教授 評
この作品は、フォルムとボリューム、そして技術のバランスがとれていて、妥協の無い、堅実につくられた「モノ」である。
小林君は、数種の金属を素材に、伝統的な金工技法を礎にして、現代の生活を昇華させる「ラグジュアリー」な価値をカタチにすることを挑戦してきた。毎日繰り返されるトライアンドエラー。そこから得た「気づき」や「学び」を確実な「モノ」とし、彼の手業から生みだされたフォルムには、シンプルな中にモダンさと凛とした佇まい、そして機能美を有する、いまの時代に求められる品格に満ちている。それはまさに、アートとプロダクトの融合。工芸の未来を指し示す可能性を気づかせてくれた作品である。今後彼が、金属に携わる環境の中で、暮らしに寄り添った更なる喜びを与えてくれる「モノ」を生み出してくれることを願ってやまない。