薄田蓮|東北地方の銭貨-銭種?収納容器等の比較による地域性について-
新潟県出身
北野博司ゼミ
貨幣を沢山集め、壺?甕などといった収納容器に納め土中に埋めたものについて一括出土銭と呼ばれている。そして発掘調査中や工事中に発見されることがある。今回一括出土銭についてどの時代に埋納されることが多かったのかについてや、使用されていた貨幣の種類、収納容器について東北地方では、どのような推移や変遷、傾向を示すのか疑問を持ち、同じ領向を示す地域としてどのようにまとまるのかについてを明らかにすることを最終目的として研究を行った。
研究方法は千枚を基準としての研究を参考に、千枚以上?以下に分け出土銭?遺跡の事例を収集した。結果、合計178件収集した。範囲は東北地方6県と北海道?新潟県の1道7県で調査を行い、その後9つの地域として分析した。さらに、永井久美男氏の埋納推定時期区分を合計8期に区分する方法を用いて埋納推定時期をグラフで比較?検討を行った。他に、貨幣の種類と総枚数についての調査と収納容器の変遷について分析を行い、最後に類似する傾向の地域をまとめた。
分析について埋納推定時期に関して特に増加傾向が見られた時期は2期(14C第2四半期~同第3四半期)、4期(15C第1四半期)、6期(15C第2四半期以降)の合計3つの時期であった。
貨幣の種類については上位?10位に入っていた貨幣に注目した結果、千枚以上?以下共に 日本全国で沢山発見される貨幣上位20位とほぼ同じ貨幣が含まれており、無文銭といった特別な例を除くと日本全国とおおむね同じ流通であったと考察した。
収納容器に関しては、1期(13C第2四半期~14C第1四半期)に曲物?木箱等の植物を加工した容器、2期(14C第2四半期~同第3四半期)に壺?甕といった焼き物の増加 、3期(14C第3四半期~15C第1四半期)以降から珠洲焼?越前 焼の増加という変遷が、陸奥国?陸中国以外の地域で見られた。前記の2地域については全期を通して木材を用いている特徴が見られた。
研究結果として増加煩向が見られた埋納推定時期について歴史的な出来事を調査した結果、2期(14C第2四半期~同第3四半期)は、戦争にまつわる出来事、4期(15C第1四半期)は、港?海運の発展、6期(15C第2四半期以降)は戦国領主たちの台頭が少なからず影響を与えたのではないかと考察した。総合的に類似する特徴を示す地域でグループ分けを行った結果、蝦夷?陸奥で1つ 、羽前?羽後?越後 で1つ、陸中?陸前?磐城?岩代で1つの3つのグループ分けが出来ると考えた(画像1)。