第7回 今夜も本に抱かれて……|本棚からひとつまみ/玉井建也

コラム 2023.07.21|

 大学生のときの趣味の一つとして、大学教員のホームページに掲載されている日記を読むというものがあった。今と違ってSNSはないし、ブログもない。自前でホームページを制作し、さらに日記を載せている人が数多くいたのである。そんな私も今はなきgeocities(Webサイト作成サービス)でホームページを公開していたが、中身は特になく、友人たちとの交流を目的とした掲示板やら何やらがあるぐらいであった。

 そのため実際には情報発信に力を入れていたというよりは、情報収集と暇つぶしを兼ねてネットを漂っているだけで、いかにも大学生の日々の過ごし方だったと言える。当時のネットサーフィンは今のようにtwitterならtwitterのなかだけで検索するという同一サービス内で探すのではなく、まだgoogleもなかったのでいくつかの検索システムを駆使して、どこかのホームページにたどり着き、そこから貼られているリンク(懐かしきバナーつきの相互リンク)をたどって、果てのないネット空間を泳いでいる気分であった。

 もちろん森博嗣だけではなく、自分の専門分野や他分野の研究者の日記をずっと読んでいて、そのうち理解が深まっていくと論文を読むようになり、昨日花に水をやっていた人はこんな文章を書くのか、と妙に感心したりしていた。そして何より驚いたのは、なかには10年後ぐらいに実際に会う機会があり、「変なことを申しますが、学部生のときにホームページを読んでおりました」という熱心なのか気持ち悪いのかよくわからない挨拶をしてしまったのである。

 何が言いたいのかというと、今でもSNSやこちらのコラムなどで何かを発信しているのは、あのときの自分自身が楽しんだことへの恩返しの部分もあるので、久しぶりの更新で大変申し訳ありません、ということである。

玉井建也 #07 森博嗣『すべてがEになる』と『MORI LOG ACADEMY』書影
森博嗣『すべてがEになる』と『MORI LOG ACADEMY』
玉井建也 #7 『文芸ラジオ』9号とわらびもちきなこ『しあわせ鳥見んぐ』書影
『文芸ラジオ』9号とわらびもちきなこ『しあわせ鳥見んぐ』

 巻頭インタビューは声優の伊達さゆりさんである。仙台出身ということで編集メンバーたちが親近感をもっているというより、ほぼ同世代なので地元の星であり、憧れであり、一つの象徴なのだなと学生たちと話をしていて思ったものである。伊達さんには非常に丁寧に接していただき、自身のチャレンジから現在の取り組みにいたるまで話をしていただいた。

玉井建也 #7 桑原水菜『炎の蜃気楼』、『遺跡発掘師は笑わない』と『炎の蜃気楼を巡る』書影
桑原水菜『炎の蜃気楼』、『遺跡発掘師は笑わない』と『炎の蜃気楼を巡る』
玉井建也 #7 アサウラ『小説が書けないアイツに書かせる方法』、『ファング?オブ?アンダードッグ』と『リコリス?リコイル ヒロインアーカイブ』書影
アサウラ『小説が書けないアイツに書かせる方法』、『ファング?オブ?アンダードッグ』と『リコリス?リコイル ヒロインアーカイブ』

(文?写真:玉井建也)

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玉井建也(たまい?たつや)
玉井建也(たまい?たつや)

1979年生まれ。愛媛県出身。専門は歴史学?エンターテイメント文化研究。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。東京大学大学院情報学環特任研究員などを経て、現職。著作に『戦後日本における自主制作アニメ黎明期の歴史的把握 : 1960年代末~1970年代における自主制作アニメを中心に』(徳間記念アニメーション文化財団アニメーション文化活動奨励助成成果報告書)、『坪井家関連資料目録』(東京大学大学院情報学環附属社会情報研究資料センター)、『幼なじみ萌え』(京都造形芸術大学東北芸術工科大学出版局 藝術学舎)など。日本デジタルゲーム学会第4回若手奨励賞、日本風俗史学会第17回研究奨励賞受賞。
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