株式会社ホリエ(山形県飯豊町)が展開する住宅メーカー?シエルホームデザイン で、インテリアコーディネーターとして働く有住和華(ありすみ?のどか)さん。山形?仙台を中心に、住宅はもちろん、オフィスやホテルなどさまざまな物件のコーディネートを手がけています。さらに有住さんが以前から思いを馳せてきたのが、地球に負担をかけない住宅や建築のあり方。それは就職先や進学先を選ぶ上でも欠かせない要素となっていたようです。
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チャレンジしやすい環境から得られるもの
――はじめに有住さんのお仕事内容について教えてください
有住:シエルホームデザインでは戸建ての住宅を中心に事業を行っておりまして、私は主に新築住宅の内装デザインや照明選定、家具のご提案などを担当しています。また住宅以外にも、企業のオフィスのデザインやホテルのリノベーションなど、戸建てから商業施設、新築からリノベーションまで幅広く扱わせていただいております。お客様は、この南陽オフィスや本社がある置賜地方をはじめ、山形市近辺や仙台にも広がっていて、最近では福島や新潟などの事業を手がけることも多くなってきました。ちなみにこのシエルグリーンラウンジにはさまざまなソファやイスがありますけど、これも家具のご提案の一つになっていて、ここで打ち合わせをしながら実際に座り心地を体感してもらったりしています。
――こちらに入社しようと思ったきっかけは?
有住:大学を志望した理由にも関わってくるんですが、なぜか小さい頃から、自分たちの生活によって地球を汚染してしまっているということが許せなかったんですね。それで一番身近なところで手をかけられるものは何だろう?って考えたら、住宅や建築なのかなと。だからそこを学びたかったし、そういう職業に就きたいと思っていました。卒業後は地元?仙台に帰るつもりだったので仙台でしか就職活動していなかったんですけど、最後の最後に学科の先輩から話を聞いて知っていたこの会社に来てみたら、「ここがいい!」ってなっちゃって(笑)。「売り上げが伸ばせればいい」とか「格好良ければいい」という考え方ではなく、ちゃんと性能を追い求めた上でそこにデザインを付加できるというところに惹かれて、この会社でなら求めているすべての要素が叶えられると思いました。
――実際に働いてみて感じたことは?
有住:入社して4年なので、社会人という括りで見たらまだまだ若手なんですね。でもこの会社は若手がやりたいと思ったことや発言したことを、そのまま汲み取ってくれるんです。例えば私は会社の経営方針や企業理念の策定に関わらせてもらい、若手ながら会社の舵切りを体感することができました。また新人の採用や教育に関しても、役員や上層部が決めるのではなく、若手がプロジェクトを組んで進めていけるのが面白くて。そんなふうに「住宅の仕事がしたい」という思いを叶えた上で、自分でもいろいろ動かしていけるところに大きな魅力を感じています。
それから2022年8月、このオープンラウンジの一角に、ドイツ発のインテリアブランド「KARE」のショップをオープンすることができました。社長とのちょっとした会話からこの計画がスタートして、そこから相手企業さんとやりとりしたり、棚を設計したり、販売方法を考えたり。新しく始める事業ではありましたが、この会社には失敗しても「気付けて良かったね」とか、事前に「こうしておいた方がいいと思うよ」と教えてくれる気風がもともとあったので、不安よりも「楽しんでできる!」という思いの方が強かったですね。
――経験を重ねていく中で気付いたことはありますか?
有住:最初にお話した通り、私の原点は「住宅や建築を通していかに地球に負担をかけずに過ごせるか」で、大学の卒業論文も小学校の温熱環境の実態がテーマだったんですね。なので、入社したら住宅性能をどう上げるかといったところを考えていこうと思っていたんです。ところが与えられたのはインテリアコーディネーター職という、全く違う分野の役割で。最初は「なんで私がインテリアなんだろう」と思うこともありましたけど、働いていくうちに、住宅性能に興味がないお客様であっても、このインテリアという窓口から住宅性能について知っていただくことができると分かったんです。直接的に訴えかけるだけではなく、違う方向から窓口を増やすことで本来伝えたかったことが伝えられるというのは、私の中でとても大きな気付きになりました。そういう側面からのアプローチというのはどの分野においても必要な観点だったなと思います。
自由に考え表現して構わないという衝撃
――芸工大への進学を決めた理由は?
有住:私が通っていた高校は進学校で、頭が良いことがすべてというか、私自身、与えられたことをこなしたりテストで100点取ることが一番正しいと思っていたんですね。でもそういった環境に身を置く中で少しずつ違和感を持つようになってきて、結局、高校生活最後の頃には学校に通えなくなってしまって。そんな悶々としていた時に芸工大のオープンキャンパスに行ってみたら、良い意味ですごく静かで、自由で楽しそうで、そして周りの自然に泣けるほど感動しちゃって。本当は、芸術みたいに自分の考えを何かに表すっていうのが嫌いで、そういう勉強をしなくてもいい様に進学校に行ったはずなのに…(笑)。でも素直に「ここ良いな」って思えましたし、建築?環境デザイン学科のことを調べたら私がやりたいことをやっていて、それで芸工大に進学することを決めました。
――万博体育投注_万博体育彩票-下载app登录を通してどんなことを得られましたか?
有住:まず私の中に刷り込まれていた「勉強が命」という考え方が、芸工大に入ったら「あれ?」って。みんなそれぞれ自由で、そこに良いも悪いもなくて、それが当時の私にはすごく衝撃的でした。自由なのは多分、自分が面白いと思ったことをみんな信じているからなんですよね。「今まで教えられてきたことが正しい」ではなく、「自分はこうしたい」っていうのを素直に言える雰囲気があって、先生方も「いいんじゃない?でもこうした方がもっと良くなるよ」と言ってくれるその感じが、とても新鮮で楽しかったです。
それから「ワンデイプロジェクト」に取り組んだことも印象に残っています。お題が発表された次の日に作品を提出するという、年に一度の過酷なプロジェクトなんですけど(笑)、みんなとカラオケ屋さんに行ってパソコンを開いたり模型を作ったりしながら、徹夜して頑張って仕上げて。なぜか辛いのに面白くなっていくっていう(笑)。その時の体験が根源にあるので、今も社内で「明日の○時までこれを仕上げてほしい」と言われたりすると、「よし!ワンデイプロジェクトだ!」ってなりますね(笑)。当時は大変でしたけど、今、仕事をする上で力になり糧になっていると感じます。
そしてもう一つ、大学生活を語る上で忘れられない出来事になったのが、当時NHKで放送されていた『東北発☆未来塾』という番組への出演でした。デザインの力で何ができるかをテーマにした特集の回で、講師が「チームラボ」代表の猪子寿之さんだったんですね。実は私、高校の時から猪子さんのことがすごく好きで、たまたま大学経由でこの回の出演者を募集していることを知って、「こんなことってある…!?」って。それで応募したら通って、東京や福島で猪子さんの授業を直接受けることができました。頑張って課題に取り組んだ結果、8名の塾生のうち選抜の3名に残り、福岡でも1週間ほど指導していただきました。その中で猪子さんに、「なんで考えて止まってるの?迷ってるなら楽しい方に行けばいいじゃん」と言われたことがすごく思い出に残っていて、それが今でもいろんな選択をする上でカギになっています。
――今後に向けて、何か思い描いていることはありますか?
有住:実は新しく開設する仙台支店の立ち上げメンバーになりまして、今後は地元の仙台でこのシエルホームデザインの魅力を発信していくことになりました。山形と仙台は隣同士ですけど、市場条件が全く違うので、今まで通りではうまくいかないこともきっとあると思うんですね。でもそこはやっぱり楽しんで、違うところは違うなりに自分を変えながら会社に恩返ししていけたらと考えています。
またもう少し個人的なところでいくと、私の原点にある住宅性能の方についても、もっとシステムの面から「コト」を大きく動かしていけるようなチャレンジをしていきたいと思っています。仕事は仕事、自分は自分としてそれぞれ可能性を広げていきたいですね。
――それでは最後に、受験生にメッセージをお願いします
有住:選択するのって高校生にとってはすごく難しいことで、何が正しいかなんて分からないし、誰の言ってることが正しいのかも分からないし。だからこそ、「ここに来たら何か見つかる気がする」みたいな直感を大事にしてほしいなと思います。自分が出した答えにどれだけワクワクできるか。そこを考えると良い選択ができるんじゃないかなと。
それから山形における問題って、良くも悪くも今後の日本が抱える問題だったりするんですね。建築?環境デザイン学科の授業では、その実態について丁寧に説明してもらえたり、また実際にフィールドに出ていろいろ体感できる機会も多くて、それが今仕事をしていく上で結構響いていて。そんなふうに学生の頃からリアルに考えられるところも芸工大ならではだと思います。
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「私が『東北発☆未来塾』の企画に応募しようと思えたのは、自分が楽しいと思ったことをとことんやる仲間たちの姿に影響されたからというのもあるんです。自分が面白いと思うならそれに従えばいい。そう思わせてくれたのが芸工大でした」と有住さん。社会人になった現在も、どれだけワクワクできるか、そしてどれだけその先に価値を見出せるか考えながら仕事を楽しむようにしていると言います。大学でも就職先でも、自由に考え提案できる環境に出会えた有住さん。今後の活躍がとても楽しみです。
(撮影:渡辺然、取材:渡辺志織、入試広報課?土屋) 建築?環境デザイン学科の詳細へ東北芸術工科大学 広報担当
TEL:023-627-2246(内線 2246)
E-mail:public@aga.tuad.ac.jp
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